『片恋パズル』(吉川英梨)

片恋パズル なぞの暗号と、ヒミツの気持ち (集英社みらい文庫)

片恋パズル なぞの暗号と、ヒミツの気持ち (集英社みらい文庫)

脳筋大食い系小5女子ひなは、カフェでバイトをしているイケメン高校生蓮人さまに絶賛片思い中。ある日いつものように蓮人さま目当てでカフェに行くと、謎のオジサンと激突。その拍子に、オジサンの手帳とひなの手帳が入れ替わってしまいます。ひなの小学生のものとは思えない渋い黒革の手帳には、はずかしい愛のポエムが書き散らされていたので、なんとしても取り戻さなければなりません。ひなはカフェ経営者の子で同級生の毒舌メガネたくを巻き込んでオジサンを探そうとします。しかし、オジサンの方の黒革の手帳には暗号が書かれていました。解読すると犯罪にかかわっていそうな疑いが濃厚になり、思わぬ事件に巻き込まれることになります。
児童文庫らしいスピーディーな展開が読ませます。たった8ページのプロローグでキャラ紹介と状況設定は完全にととのえているので、読者はあとは何も考えずに物語を楽しむことができます。「私、一条ひなは、今日も全力で走ってます!」という書き出しに象徴されるように、全編走り抜けるような爽快な作品になっています。
もちろんイケメン高校生蓮人さまはダミーで、ひなの真の思い人は同級生の毒舌メガネの方です。大食い女子と学究タイプというクラス内ヒエラルキーが高いとはいえないふたりが事件の捜査をきっかけに距離を縮めて行く様子はほほえましく、全力で応援したくなります。
ブコメ部分とミステリ部分がみごとに融合しているのも、この作品の魅力です。娯楽読み物としては非常に完成度の高い作品になっていました。