『空はなに色』(濱野京子)

空はなに色 (ホップステップキッズ!)

空はなに色 (ホップステップキッズ!)

夏休みも終盤、神田に住む小学5年生の規子のもとに、金髪で派手ないとこの中学生美蘭が家出して転がり込んできます。クラスで唯一「子」のつく名前で、しかも規則の「規」がついている規子は、名は体を表す真面目少女。一方、親がサッカー好きだからミランというキラキラネームをつけられたいとこは、嘘つきで軽薄。こんなふたりがうまくいくはずもなく、規子の夏休みは憂鬱なものになります。
真面目な性格がたたってクラスでめんどくさい役ばかり押しつけられる規子は、ただでさえクラスでうまくいっていないのにさらに美蘭にひっかきまわされます。近所の男子を無駄にたらしこんだり、仲のいい女子に規子の悪口を言うように煽ったりと、やりたい放題やらかします。
しかし、美蘭は本質的に嘘つきなので、彼女の言動はいい方に解釈しようとすればできないこともありません。公道で騒げるのが楽しいという理由で反原発デモについていこうとしたりする美蘭に振り回されるうちに、規子は他人の多面性に気づくようになります。
地域性の問題がクローズアップされているのも興味深いです。美蘭が住むのは首都圏だけど田舎で、常に周囲から監視されているような居心地の悪いところです。
そして、規子が住むのは少子化で有名な神田。小学校は学年に1クラスしかなく、人間関係がシャッフルされないという窮屈さを抱えています。しかも、高学年ともなると受験組と非受験組の分断もできて、地獄感が倍増します。都市部の少子化問題を取り扱う児童文学は、今後増えてきそうです。