『アサギをよぶ声 新たな旅立ち』(森川成美)

アサギをよぶ声 新たな旅立ち

アサギをよぶ声 新たな旅立ち

シリーズ第2弾。若い男女はそれぞれ男屋・女屋に入れられ、男子は戦士になるための訓練、女子は機織りの訓練をさせられる性差別的な村が舞台となっています。このシステムに反抗した女子アサギが弓の勝負に勝ったのに女屋に入れられることになったのが、第1巻までの話でした。2巻では、女屋に入ったアサギが村で神隠しのような事件が続発していることを知り、真相を探るために外の世界に旅立ちます。
第1巻で未解決だった問題がだんだんと深められていっています。前巻で唯一外の世界を感じされる存在であった小舟でこっそり交易をする女ナータが、敵か味方かは判然としませんが当面のアサギの導き手になります。共産的な村で育ち商いという概念がよくわからないアサギからは、ナータはとても神秘的な存在に見えます。ナータの小舟に乗せられて初めて大きな川を見てびっくりし、世界にはもっと大きな海というものがあるのだと聞かされる場面の、世界が開けていく感じがよいです。
しかし、交換のある世界がアサギの村よりましかというと、そうもいきません。到達したとが村には、〈生き口〉と呼ばれる人身売買制度のようなものがあり、それが神隠し事件と関わっていそうなことがわかります。
ということで、上野瞭っぽいディストピアものに展開しつつあります。ぜひ上野瞭を乗り越えるような結末を見せてもらいたいです。