- 作者: 舟崎克彦,荒木慎司
- 出版社/メーカー: 静山社
- 発売日: 2015/10/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
太郎の怨念の晴らし方が奇怪です。彼のやり方は、過去に戻って怨念が発生する出来事を未然に防ぐというもの。「番町皿屋敷」の話では、青山主膳をおどして、皿を割る前にお菊に暇を出させます。こうすると物語は残るが、土地の穢れは浄化されるのだといいます。そうすることで怨霊が不幸を免れる別の世界線ができるから怨念が帳消しになるということなのでしょうか。このあたりの理屈はよくわかりません。
しかし、この程度のことでよくわからないといっていたら、舟崎克彦作品は読めません。たとえば怪談集『舟崎家の怪談』*1には、語り手の作家が創作した妖怪が実体化し、その妖怪が出てくる原稿を出版社に渡したら妖怪が消えたという話が載っています。舟崎克彦作品では現実と虚構、虚構と別のレベルの虚構のあわいがいとも簡単に融解するのです。
第4話の「四谷怪談」の話では、そっちを過去改変するのかよという驚きがあり、ついでに亡祖父の飼い猫の名前が「ボツ」であることが重大な伏線であったことが唐突に明らかになります。これもなかなか驚愕の展開ですが、きっと舟崎克彦にしてみればそれほど難解なことを書いているつもりはないのでしょう。
この作品が舟崎克彦の遺作となってしまったようです。子どもの脳みそを豪快にシャッフルしてくれる、わけがわからないけど理屈が通っているようなおもしろいお話をたくさん書いてくださったことに感謝します。