『アカシア書店営業中!』(濱野京子)

アカシア書店営業中! (スプラッシュ・ストーリーズ)

アカシア書店営業中! (スプラッシュ・ストーリーズ)

街で唯一の書店で、異様に児童書の品揃えのいい(サトクリフが普通に置いてあるレベル)アカシア書店の児童書コーナーが、店長の方針で縮小されることになります。それに反発した店員は、児童書の売り上げを10パーセント上げると宣言。アカシア書店の危機を知った本好きの小学生たちも立ち上がり、売り上げアップのためにさまざまな策を考えます。
書店を賑わすために、子どもたちがPOPをつくったり、読書リレーの企画を立てたり、サイン会を催したりと、大活躍します。お仕事体験ものとしては、楽しく読めると思います。その中で、書店の苦境、児童書に理解のある書店員が立場の弱い非正規雇用労働者であることなど、本をめぐる問題に関する知識も盛り込まれています。詰め込みすぎなため消化不良感はありますが、このような知識を広めることも重要ではありましょう。
ただ、題材が題材なため、結局本を買い支える財力のある人間が偉いのだという価値観が前面に出ているのが気になります。買い支える人がいないと文化が滅ぶというのはもちろん真理ですし、大人が読めば出版業界がそこまで苦境に立たされているのだということは理解できます。しかし、それを自分でお金を稼ぐことのできない小学生に求めるのは酷です。経済的に厳しい家庭に生まれたために図書館で本を読んでいる子どもは、この作品の中に自分の居場所を見つけることができるでしょうか。子どもにはもう少し猶予を与えてもらいたいです。