『きょうしつはおばけがいっぱい』(さとうまきこ・原ゆたか)

さとうまきこ原ゆたかによる絵童話『きょうしつはおばけがいっぱい』(あかね書房・1992)が再刊されました。
学校のこどもまつりで、保護者が教室につくったおばけやしきが大人気。とても怖いと評判で、友達と手をつないで入るように指示されていますが、お調子者のだいくんはひとりで入ってしまいます。だいくんはこっそり懐中電灯を持ち込んでいて、おばけのからくりを暴きまくり余裕の表情でした。しかし狭い教室につくってあるはずのおばけやしきなのに、いつまで歩いても終わりが見えず、だんだん空気が変わってきます。
かいけつゾロリ』の原ゆたかの作品ですから、それはもうサービス精神満点でおもしろいに決まっています。破れた障子に幽霊の影が映る場面のページをめくると、障子の裏側が描かれており、なにを材料として幽霊がつくられているのかが図解でわかるといった楽しい仕掛けが満載です。文字と絵を追ってページをめくることで能動的に物語に参加しているかのような体験を得られます。
さとうまきこも作中の空気を自在に操作し、楽しさと怖さ、不安の安心のバランスのよいエンターテインメントに仕上げています。特に、だいくんが怖さを紛らすためにとある歌を歌うとおばけたちが激怒するというギャグがおもしろかったです。
ほかにもさとうまきこ原ゆたかによる作品が刊行予定になっているようで、楽しみです。