『なのだのノダちゃん ふしぎなコウモリガサ』(如月かずさ)

ふしぎなコウモリガサ (なのだのノダちゃん)

ふしぎなコウモリガサ (なのだのノダちゃん)

小学3年生のサキちゃんは、雨の日の学校の帰り道に、黒いコウモリガサの下で泣いている黒ずくめの小さな女の子に出会います。一人称が「わがはい」で妙に古くさい言葉を話し、バカボンのパパのように語尾に「〜のだ」を付ける奇妙な女の子は、「ロムニア・クルトゥシュカラーナ・パパナッシュ十七世」というやたら長い名前を名乗りますが、めんどくさいのでサキちゃんは「ノダちゃん」と呼ぶことにします。
ノダちゃんのカサには、コウモリ型の穴が開いていました。サキちゃんはその穴をふさぐものを探す手伝いをします。そのたびに、ばんそうこうを十字架型に貼り付けると怖がったり、魔女の形のシールをもらうと、魔女にはお世話になっているからという理由で貼るのを拒んだりと、ノダちゃんは自分の正体のヒントをあからさまに出してきます。
安心感のあるパターン化された展開と、ノダちゃんのすっとぼけたキャラクターの魅力で、読者をぐいぐい物語の世界に引っ張ってくれます。はたこうしろうの気の抜けたイラストも魅力的です。
低学年の小学生が自分のセンスで持てるアイテムは限られていて、その中で誰にでも身近なカサというアイテムを取り上げているところが、この作品の大きなフックになっています。第3話のサキちゃんがノダちゃんに不思議なカサ屋に連れて行ってもらってカサをプレゼントしてもらうエピソードも、身近なアイテムに魔法を盛る奇想が楽しいです。このエピソードでも、裏側にきれいな青空の模様があるカサは時々雨雲が出て雨が降って使い物にならなくなるなど、一見便利そうな魔法のカサには必ず落とし穴があるというパターンが確立されています。低学年向けの物語として非常に丁寧に作り込まれています。