『占い屋敷の夏休み』(西村友里)

占い屋敷の夏休み

占い屋敷の夏休み

父親と暮らすひとり親家庭の子ども真生は、小学5年生の夏休みに引っ越しをすることになりました。新しいマンションに向かう途中、占いが嫌いなはずの父がなぜか真生を白い着物に赤い袴、白いはちまき姿で長い数珠を振り回すうさんくさい占い師のところに連れて行きます。占いが終わると、父親は姿を消していました。真生はそのまま占い師のお屋敷で夏休みを過ごすことになります。
占いが終われば父親と一緒の日常に戻れるはずだったのに、そこで放り出されて一気に安心感を奪われる感じが、物語の導入部として魅力的です。ライオンの石像のある林のような広い庭、ものすごい爆音を立ててトランポリンでバク転をするうさんくさい占い師と、非日常感のあんばいもいい具合です。
この作品で描かれているのは、おそらく異類婚なのだと思います。いや、すべての結婚は異類婚だということを描いているのかもしれません。それが継続するにせよ破綻するにせよ、豊かなものが得られる可能性があるということが感じられる作品になっています。