『リトルTの冒険』(古川タク)

リトルTの冒険 (福音館の単行本)

リトルTの冒険 (福音館の単行本)

月刊「おおきなポケット」で連載されていたまんがが単行本になりました。
巨大な宇宙人リトルTは、地球に隕石が接近していることを偶然知り、救助に向かいます。ところがワープ中の事故で体が分裂してしまって、無数の小さなリトルTが生まれてしまいます。元の大きさなら余裕で隕石を阻止できたはずなのに、いまの大きさではどうにもなりません。リトルTは離ればなれになった自分と融合して元の大きさに戻ろうと奮闘を始めます。
この作品のおもしろさは、大きさと時間のスケールを操って遊んでいるところにあります。地球に降り立ったリトルTは、はじめはボウフラと同じくらいの大きさで、ボウフラがはじめての友達となります。だんだん大きくなって人間サイズになったら海賊やら悪党やらのいさかいに巻き込まれて冒険をし、もっと大きくなると今度は人間に恐れられてたいへんな目に遭うといった具合に、主人公の大きさの変化にともなって物語もダイナミックに動くのが愉快です。
リトルTは宇宙人なので、時間の感覚も地球人とは異なります。隕石衝突はリトルTの星の10時間後でしたが、これは地球の100年に当たるので、かなり余裕があるように見えます。しかし、いきなり竜宮城に迷い込んで時間を大幅にロスしそうになったりと、なかなかうまくいきません。長い時間の中で意外な人間関係が生まれるのもみどころです。
設定をいかした遊びがたくさんあるので、まとめて読むと、とても楽しいです。