『ちえり×ドロップ レシピ1 マカロニグラタン』(のまみ ちこ)

第1回小学館ジュニア文庫小説賞大賞受賞作『さくら×ドロップ』の続編。今度は主人公がサクラからチエリに交代し、タイトルも変わっています。となると、次は三人組の残りのミサトが主役になり、タイトルは『みさと×ドロップ』となるものと予想されます。さらに、レシピ1というナンバリングもあるので、『さくら レシピ1』『ちえり レシピ1』『みさと レシピ1』『さくら レシピ2』『ちえり レシピ2』『みさと レシピ2』と、主役を交代しながら螺旋状にシリーズを続けていく構想なのだと思われます。なかなか興味深い試みになりそうです。
今回主役をはるチエリは、ダンス部のエースで考え事をするときは逆立ちをする癖のある*1元気少女。そんな彼女も、親友のサクラが父親の再婚相手の連れ子の潤一といい感じになり、ミサトもクラスのお調子者男子スガノに片思いして大胆にアプローチしているのを見て、恋愛への関心が高まってきます。とりあえず手近なところで、いつも親切にしてくれる年上のいとこを初恋の練習相手にしようとしますが、偶然知り合った年下のクール系男子も気になってきて、悩みます。
恋愛や性的なことに対する小学生なりの興味や、人間関係のいざこざが等身大に描かれているので、読者の共感を呼びやすいと思います。児童向けエンターテインメントとしてよくできています。
チエリは器用な子で、特に努力しなくてもダンス部で大活躍しています。その反面やや鈍感なところがあり、そんな自分が周囲の反感を買いやすいことに気づいていません。読者はチエリよりも早く導火線に火が付いていることに気づかされます。作中人物より早く読者に導火線の存在に気づかせ、先の展開への期待感を喚起する手つきがうまいです。
1巻からすでに継続している導火線も気になります。ミサトの片思い相手のスガノは、どうやらサクラに片思いをしているようなのですが、ミサト以外はそのことに気づいていない様子。ミサトは遠回しにチエリに相談したりもしますが、チエリは全然察してくれません。これが爆発するのは次巻か、それとももっと先になるのか、続きが気になります。

*1:チエリ氏は本当に現代の小学生なのだろうか。チエリ氏によると、「逆立ちすると、いろんなことがひらめく」らしい。『あばれはっちゃく』(TVドラマ版)を知っている世代だとすると、年齢サバ読むにもほどがある。