- 作者: にかいどう青,のぶたろ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/06/09
- メディア: 文庫
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第1話のネコマタの人捜しの依頼を受けるエピソードは、少量のミステリ要素もある小粋な美談としてうまくまとまっています。第2話は死に神(見た目イケメン青年だが、実年齢は不明)に片思いしている貧乏神(見た目中学生女子だが、実年齢は不明)の恋の悩み相談を受ける話です。こちらも、ほほえましくて心温まる話になっています。
問題は第3話です。他人の悩み事を解決していたひびきが最後に自分自身の問題を突きつけられるという構成は1巻と共通しており、なかなか胃が痛くなります。ひびきは友だちを得てしまったために他人から向けられる悪意への耐性が低下してしまい、以前ならなんとも思わなかったはずの陰口が原因で寝込んでしまいます。孤独な人間が救われることは、なんと難しいことか。人類なんか戦争で滅亡すればいいと願っていたネコマタや、自分のことが嫌いで「わたしが、わたしじゃなければ、よかったのに」と思っていた貧乏神と同じ心性を自分も持っていたということを、ひびきは自覚してしまいます。
しかし、ひびきの性格で一番よくないのは、天然のタラシ体質であることです。「東堂ひびきのまえでは、じょうずに、かっこつけていたい」と身構えている絵理乃に、「絵理乃ちゃんは、ちゃんと、かっこいいよ。いつも、かっこよくて、かわいい」とナチュラルに言ってもてあそんでしまう空気の読めなさが怖いです。この2人は1回、本気で痴話喧嘩をすべきだと思います。