『うちら特権☆転校トラベラーズ!!』(こぐれ京)

沖縄(?)の島の学校に、謎の転校生がやってきました。〈災害調査〉のために来たという転校生大葉ミルは、なんらかの〈特権〉を持っていて、先生相手にタメ口で命令したり、授業中も好き勝手に抜け出したり、謎の決めポーズを決めてみたりと、フリーダムな行動を繰り返します。みんなのために休み時間に購買部のパンの予約に走る〈パンダッシュ〉を趣味にしている女の子島袋小春は、なぜかミルに気に入られて助手に指名されてしまい、面倒ごとに巻き込まれます。
小春のハイテンションな語りで隠蔽されていますが、小春は実は不幸な生い立ちの孤児であったことがやがて明らかになります。そんな小春に対するミルの「助手として私と旅をして」というセリフは、プロポーズに他なりません。この話を単純化すると、不幸な孤児を王子さまが救い出して外の世界に連れ出してくれるという構造になっているので、娯楽性は保証されています。
認識のギャップというものは残酷なもので、小春の趣味の〈パンダッシュ〉は、客観的にはパシらされているようにしかみえません。それでも小春の学校生活は安定していましたが、転校生という外部の目が導入されることで、その化けの皮は剥がされてしまいます。しかし、そのやむにやまれぬ行動を頭ごなしに否定せず、受け止める姿勢をみせているあたり、児童文学としていいところをすくい取っています

……わかってくれてたんだ、うちの気持ち。
ひとから見たら、ただつらいことに見えるかもしれない……。
それでも、自分で選んでやることって、ある。
それはなにか大切な、自分の形を作っておくための……器みたいなものなんだ。
(p140)