『ふしぎ古書店3 さらわれた天使』(にかいどう青)

ふしぎ古書店3 さらわれた天使 (講談社青い鳥文庫)

ふしぎ古書店3 さらわれた天使 (講談社青い鳥文庫)

文学少女はなぜ暴食の罪を犯すのか?

心に闇を抱えた文学少女東堂ひびきが福の神の弟子として人助けをする「ふしぎ古書店」シリーズ、おばの美澄朱音が主役を務める講談社タイガでの番外編『七日目は夏への扉』を挟んで、第3巻が刊行されました。
『七日目は夏への扉』では、タイムリープで運命をキャンセルしてしまうまでに生命力の強い朱音の魅力を堪能できます。おとなしい文学少女のひびきは朱音と対照的にみえますが、実は根っこのところは似ています。
ひびきと朱音の共通点は、本が好きであることと、大食いであることです。大食いであることはすなわち、生きることに貪欲であるということを表しています。本と食べ物で栄養を摂取して際限なく欲望を満たしていく生命力の強さ。これこそがひびきや朱音の持つ魅力です。
福の神のレイジさんをはじめとする化け物たちや唯一の人間の友だち秋山絵理乃との関わりによって、ひびきは「「楽しい」より、もうちょっと楽しい」ことを知り、「友だちより、もっと友だち」な大切な存在を得ます。これにより、もともと強かったひびきの欲望はさらに増大します。そして、おばの朱音と同じく運命をキャンセルしてしまうほどの力を得るのです。
大人の勝手な都合の押し付けに反逆させ、どこまでも子どもの欲望を肯定する「ふしぎ古書店」シリーズは、児童文学としてとても正しいと思います。