『ゆうれい探偵カーズ&クレア1 呪われた図書館』(ドリー・ヒルスタッドバトラー)

ゆうれい探偵カーズ&クレア〈1〉呪われた図書館

ゆうれい探偵カーズ&クレア〈1〉呪われた図書館

「名探偵犬バディ」シリーズ第1作でエドガー賞児童文学部門を受賞した作家の新シリーズ。
主人公のゆうれい少年カーズは、壁抜けをすることが苦手な落ちこぼれでした。この世界のゆうれいは風に飛ばされると抵抗できずどこまでも吹き流されていくような無力な存在で、冒頭でカーズの一家が住んでいた学校が壊されたためみんな風で放り出されてしまい、一家離散の憂き目にあいます。
この導入部、低・中学年向けのエンタメとしては完璧です。設定説明をこなして話を動かし、欠点のある主人公の親しみやすいキャラクター性も印象づけるという仕事がわずか10ページほどでテンポよくこなされているので、すぐに作品の世界に入り込んでいけます。
カーズは流れ着いた図書館で、「生者」なのにゆうれいの姿を見ることができる能力を持った少女クレアに出会います。彼女が執拗にカーズを尾行してくるので、カーズはおびえきってしまいます。天才的なひらめきよりもしつこく地道な捜査で真相に近づくクレアの探偵としての特性を初登場時から印象づけていて、これも手練れの技という感じがします。
クレアは自分のような特殊能力を持っていない普通の利用者のあいだで図書館に幽霊がいるという目撃情報が広がっているという事件の捜査をしていました。カーズもクレアに巻き込まれて探偵活動を開始します。
ゆうれいが実在するという特殊状況のなかでシンプルな論理的解決が導かれます。特殊な設定・キャラクターの魅力・ミステリとしての安定感、いろんなおもしろさがつまっているので、楽しいシリーズになりそうです。