- 作者: 藤野恵美,HACCAN
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/10/13
- メディア: 文庫
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「幸運のティーカップ」は、ありすお嬢様の亡母がコレクションしていたティーカップの謎をめぐる物語です。合理主義の権化であるありすと父に対し、母は占いやおまじないが好きな夢見がちな女性でした。親子の相克と運命をめぐる物語なので、あのように完結したシリーズ正編を理解するためのよい材料になりそうです。
「うさぎの穴に落ちて」は、怪しい行商人〈帽子屋〉から宝島と宝の地図を買ったありすが宝探しをする話です。短いなかに無人島暗号冒険と楽しいものをぎっしりつめこんだ、藤野恵美らしい職人技が光る短編になっています。
この島にはうさぎがたくさん生息していたので、ありすは食肉としてのうさぎについてうんちくを披露し、「ピーターラビットのお父さん」に関する冗談を言いかけます。藤野恵美作品の多くが「食」と「家族」の闇をテーマにしていることを参照すると、この有名な冗談も笑えなくなります。
この島に生息しているのは白いうさぎでした。白いうさぎ、雪兎、ゆきとと連想していくと、あ、これ怖くなりそうだから考えるのやめた方がよさそうです。
ところで、『ふたりの文化祭』にもうさぎが補食される場面がありましたが、やっぱり深く考えない方がいいかな。