『キミがくれた希望のかけら』(セアラ・ムーア・フィッツジェラルド)

キミがくれた希望のかけら (文学の森)

キミがくれた希望のかけら (文学の森)

アイルランドの児童文学。メグとオスカーは家が隣同士の親友でした。しかし、メグはニュージーランドに転校することになります。それでも親しくメールのやりとりを続けていましたが、メグの元の家にパロマという少女が引っ越してきてから雲行きが怪しくなってきます。だんだんパロマとオスカーが仲良くなっていくことに嫉妬したメグは、オスカーと距離を取ろうとしてしまいます。そして、オスカーが自転車で海に飛び込んで自殺したという信じられない報を受けることになります。
切ない遠距離三角関係の物語として始まりますが、中盤からはそれどころではない邪悪さをみせるようになります。
物語の冒頭は、オスカーの葬式の場面から始まります。ここで、神父がオスカーの親友に詩を朗読してもらうと言い出します。メグはそんな話は聞いていませんでしたが、その役目は当然自分がするものだと思って身構えていました。ところが、出てきたのはパロマ。遠くにいたメグよりもこの時点では情報を持っていない読者は、いきなり手痛い裏切りを受けたメグに同情しつつ、よくわからないけどかなりややこしい事態になっているらしいとの予感を持たされることになります。そこから時間がさかのぼり、メグとオスカーが語り手を交代しながら、メグの引っ越し以前からの経緯を説明していきます。
この構成が絶妙です。要所要所で読者に違和感を持たせながら核心的な情報はすぐには開示せず小出しにしていくテクニックがいやらしく、読者のゲスな興味を煽ってページをどんどんめくらせていきます。
タイトルや装丁からは想像がつきにくいですが、悪趣味なエンタメが好きな人におすすめできる作品になっています。