- 作者: ひこ・田中
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/10/27
- メディア: 単行本
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鉄男は、部活は学校のおまけなのではないかと考察します。
オレはおまけのついたお菓子を思い浮かべた。
「欲しくないおまけのついたお菓子やったら買わんといたらええだけやけど、学校は行かんわけにはいかないし。それと、そのお菓子をめっちゃ好きやのにおまけはいらん場合は、泣く泣くおまけ付きで買って、そのおまけが無駄になるし……。あ、それと、もしおまけがなかったらこのお菓子の値段はもっと安くなったんと違うやろうかって考えたら悩むし。おまけがあるばっかりに悩んでしまうというのは……。おまけなしの学校って、いったい何が安くなるんでしょうね」
(p323-324)
部活動や放課後が学校のおまけであるという考えは、本質を突いているように思えます。そして、そのおまけの時間にも生徒に支配力を及ぼそうとするところが、学校の怖さでもあります。
鉄男は学校の「不気味」さの本質に近づくほど、正気度を低下させていきます。部活に入らず、集団行動に懐疑的で学校の価値観と距離を置いていたはずの鉄男も、だんだん学校的価値観に侵食されていきます。「授業の間は中学生、校門出たら中学生は終わり」というシンプルな考えに至った鉄男は、それが学校の価値観に真っ向から逆らうものであることに気づき、恐怖します。
それってヘンか?
ヘンやないって思うのが怖いオレがいた。
絶対にヘンやと言い聞かせているオレがいた。
(p358)
はたして、「成田、中学生になる。」と題された最終章の鉄男のSAN値は、無事だったのでしょうか。