『女神のデパート2 天空テラスで星にねがいを☆』(菅野雪虫)

現代社会派児童文学の旗手による、つぶれかけた老舗デパート弁天堂の再建ストーリー。父社長が病気になったため急遽社長に就任させられた小学5年生の結羽は、父が復帰するとわりとあっさりお役ご免になります。
体験してみなければわからないことはあるもので、わずかな社長体験で結羽の世界をみる目はかなり変化します。そこで手に入れたプロデューサーとしての視点を生かしてアイディアを出したりみんなの意見を調整したりして、クラスの文化祭の出し物を成功に導きます。しかしもはやそれでは満足できず、弁天堂のためにもっと貢献したいと思うようになります。
新たな視点を得るという体験を疑似体験させてくれるところに、この作品のおもしろさはあります。
しかし、鋭い視点を手に入れれば、あまりみたくないこともみえるようになってしまいます。結羽がもっとも頼りにしている副社長のおじがどうみても働きすぎなこと、外見は若々しいけど実際はもう無理はできない年齢になっていること、忙しくてまともに食事する時間をとれず栄養状態に不安があること。結羽はもはや、気軽におじを相談相手にすることができなくなります。このことは、おじに時間をとらせないようにするため相談する前に企画書を作るようになるという結羽の成長の契機にもなるのですが、根本的な健康問題はまったく解決されていません。現代の社会派児童文学、つらすぎます。
とりあえずにぎやかしや話題作りにはそこそこ成功した弁天堂ですが、まだまだ赤字は解消されません。あまり神さまが手助けしすぎるとバランスがくずれて不運も訪れることになるという作中ルールも明かされました。まだまだ前途多難な弁天堂の今後が気になります。