『X-01 壱』(あさのあつこ)

あさのあつこ講談社YA! ENTERTAINMENTでの新シリーズ。ヒロイックファンタジーっぽい世界と未来の日本っぽい(作中では「2XXX年 ニッポン」と表記されている)世界を舞台にふたりの主人公の活躍が並行して描かれる、謎めいた物語が展開されます。
主人公のひとりは、火国と勃国というふたつの国に囲まれ常に侵略の危機に立たされている永依の国いう小国の少女戦士ラタ。飢え死にしそうなところを将軍に拾われ戦士として育てられたラタには天性の人殺しの才能があり、敵から「漆黒の鬼神」という二つ名を与えられおそれられるくらいの一騎当千の戦士に成長します。
ラタの相棒で参謀役を務めるのが、リャクランという少年。彼はこれはと見込んだ人物を試すときは死にかけた老人を目の前に置き、毒を与えるか薬を与えるかの選択を迫る、とても性格のねじくれた少年でした。ラタはこの試練に対し、薬の瓶も毒の瓶もどちらもぶった切るという回答を出し、リャクランを驚嘆させます。ラタもリャクランも過剰な性格の危険人物なので、このふたりの動向が戦争の行方をどう左右していくのか、先が楽しみです。
もうひとりの主人公は、N県稗南郡稗南町に暮らす15歳の少女由宇。父親が「X-01」「ラタ」という謎の言葉を残して急死してから、謎の集団の襲撃を受けます。
ラタが両性具有の破壊神の名を持ち、由宇は初潮が来ないため自分のことを女でも男でもないと思っているという設定が気になります。シリーズは生殖SFになっていくのでしょうか。