『怪談収集家 山岸良介と学校の怪談』(緑川聖司)

霊媒体質を見込まれて怪談収集家山岸良介の助手にされた少年高浜浩介の受難の物語「怪談収集家」シリーズの第3巻。今回浩介は、山岸良介不在のなかで学校の怪談に立ち向かうことになります。
今巻で登場する怪異のひとつ傘女は、「赤い傘がいい? 青い傘がいい?」という選択を迫ってきます。赤い傘を選べば傘で刺され血まみれになって死に、青い傘を選べばやはり傘で刺され失血により青くなって死んでしまいます。両方の傘をもらって自分が傘女に成り代わるという選択肢もあらかじめ怪談のかたちで提示されていますが、もちろんこの回答は間違っています。
第3巻の浩介はすでにある程度怪談のパターンを学んでいるので、いままでの経験から対処法を考え出そうと苦心します。それは、怪異側の仕掛けるルールの裏をいかにかくかという、頭脳戦となります。その思考の過程を楽しむのが、第3巻のポイントです。
ただし浩介は、いままでの経験で間違った学習もしてしまっています。第2巻で「バケモノにはバケモノをぶつけるんだよ」という策を山岸良介から学習した浩介は、それを実践しようとしてしまいます。
貞子VS伽椰子 (小学館ジュニア文庫)

貞子VS伽椰子 (小学館ジュニア文庫)

第2巻の刊行は偶然『貞子VS伽椰子』の公開時期と重なっていたため、ちょっとおもしろいことになっていました。浩介も『貞子VS伽椰子』をみて、策に溺れた者の末路を学習しておけばよかったのに。
さて、この「怪談収集家」第3巻のもっとも大きなサプライズは、次回予告にありました。「本の怪談」シリーズとあわせて長いシリーズとなりメタにメタを重ねてきた緑川聖司の怪談は、優れた怪談論であると同時に、優れた物語論にもなっています。この次回予告により、緑川聖司の壮大な試みへの期待がさらに高まりました。