- 作者: ダグマール・ガーリン,坂本明美
- 出版社/メーカー: 佑学社
- 発売日: 1982/09/01
- メディア: 単行本
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物語は、どうということのない村の夜明けの場面から始まります。陶器工場で働く男クサビエがいちばんに目を覚まして家の外に出て子どもの学費のことに思いをはせつつ、村の厄介者バルタザールが自転車で朝霧に包まれた橋を渡っていく様子を見送るといった、生活感のある描写に引きこまれていきます。しかし、村の人間が大人も子どももダメ人間クズ人間ばかりだということがすぐに明らかになり、読者のプルメリ村に対する印象は、絶対行きたくない限界集落だというところに落ち着きます。
村に住んでいる外部の人間は小学校の先生だけでした。この先生は村に知性のある人間は自分だけだと思い上がっていて、都会の学校に異動したいと切望していましたが、村の人間が教育委員会に先生を残すよう嘆願書を毎年出すので異動できず、10年以上不本意な生活をしていました。村の人間は村の人間で、別に先生を尊敬しているわけではなく都合のいい飼い犬扱いしていて、逆らうと村の商店で食料を調達できないようにして兵糧攻めで従えるという鬼畜な所業をします。
こんな村の夏休み明け、数人の子どもが上級学校に上がって、スクールバス通学をすることになります。すると村の学校の生徒数が激減し、先生はこれ幸いと勝手に廃校を宣言してしまいます。学校がなくなると子どもたちが暇になり、好き勝手に遊び始めます。すると……と、玉突き事故方式・風が吹けば桶屋が儲かる方式で騒動が拡大し、スクールバス失踪という大事件に発展していきます。
人間の描き方・コミュニティの描き方・社会の描き方がシニカルで辛辣で、読み応えの作品でした。