『水の森の秘密』(岡田淳)

1994年の『ふしぎな木の実の料理法』から始まった「こそあどの森」シリーズが、全12巻で完結。森の地面から水がわきだして、森全体が水没するという大事件が起こります。
大洪水というエピソードですが、悲壮感や終末感はあまりありません。むしろ、それぞれの家や森が新たな相貌をみせる楽しい面の方が強調されています。
まるでこうなることが最初から想定されていたかのように、それぞれの家が大活躍します。スミレさんとギーコさんのガラスびんの家は、コルク栓をはめられることで水中要塞と化し、さらに水没した森の様子を一望できる水中ミュージアムにもなります。
そしてスキッパーのウニマルは、本物の船となり浮上します。回想シーンのバーバさんは、洗面器と陶器のボウルと小石を使った簡単な実験で、ウニマルが浮上する仕組みをスキッパーに説明します。ここのわかりやすさとワクワク感、岡田淳は小学校の先生としてもとても優秀だったのだろうということをうかがわせます。
冒頭部分のプニョプニョタケというキノコの料理法が開発されるエピソードは「ふしぎなキノコの料理法」であり、第1巻をなぞったものになっています。そしてラストは、スキッパーの今後の生き方の方向性が確定したように読めます。このあたりをみると、きれいに幕が引かれた感じはします。とはいえ、森や住人たちに大きな変化があったわけではなく、続けようと思えばいくらでも続けられるラストでもあります。あくせく生き急がないことがこのシリーズの美点ですから、実に「こそあどの森」らしい終わり方であったように思います。