『牛乳カンパイ係、田中くん 天才給食マスターからの挑戦状!』(並木たかあき)

牛乳カンパイ係、田中くん 天才給食マスターからの挑戦状! (集英社みらい文庫)

牛乳カンパイ係、田中くん 天才給食マスターからの挑戦状! (集英社みらい文庫)

「牛乳カンパイ係、田中くん」第2弾。田中くんが給食マスターを目指している理由が亡母の遺志を継ぐためであったことが明らかになったり、失敗すると永久に受験資格を失ってしまう給食マスターになるための試験を受けることになったりと、一気にシリアス度が増してきました。
3回の試験のうち1回だけでもクリアできれば合格なのに、田中くんは2連続で惨めな敗北を喫します。田中くんが優秀な給食の達人であることは1巻ですでに証明されていますが、焦りやプレッシャーのせいで本来の力を出し切ることができなくなっています。ここまで田中くんを追い込むとは、1巻のおバカ展開からは予想できませんでした。
物語が重苦しいだけに、随所に入れられるギャグの役割もさらに重要になってきます。試験に失敗したあと田中くんが牛乳を飲んだくれてくだをまくギャグなんかは、シリアスをうまく緩和させてくれます。一方で、上履きのにおいをかいでキレた難波ミナミが田中くんを叱りとばすギャグは、シリアスを引き立てる方向に機能しています。
食を提供する者は思いやりを持てというメッセージ性は明らかなので、説教くさいといえば説教くさいです。しかし、思いやりを漠然としたものとせず、具体性を持たせているので説得力は高いです。すなわち、アレルギーへの配慮であったり、食べられる量の違いへの配慮であったり。人はみんな違う人間なのだというところに目を開かせる教育性は重要です。
ギャグとシリアスの配分がうまく、直球のメッセージを巧みに娯楽として落としこんでいる、得難いエンターテインメントです。