『ふしぎ古書店5 青い鳥が逃げだした!』(にかいどう青)

ふしぎ古書店5 青い鳥が逃げだした! (講談社青い鳥文庫)

ふしぎ古書店5 青い鳥が逃げだした! (講談社青い鳥文庫)

「ふしぎ古書店」シリーズ第5弾。今回は短編が2本収録されています。
ひとつめの「しあわせは、青い鳥とともに」は、本の中から逃げ出した青い鳥を探す話です。ひびきはその様子を、「ぎっしりと文章がならんでいるなかに、かわいらしい青い鳥ののイラストを発見した。「青い鳥」っていう文字ではなく、イラストなんだなって思った」と、冷静に報告しています。文章がぐちゃぐちゃになっているなかを青い鳥が動き回る様子にワクワクさせられます。本の中身が暴走し文字が躍るという妄想は本好きなら必ず一度はするものですが、そういうところを拾い上げるあたり、やはりこのシリーズはよくわかっています。
ひびきは青い鳥の行方を捜すにあたって、そもそもなぜ物語の結末で青い鳥は逃げてしまったのかという疑問を抱きます。レイジさんは、ひびきにこのような助言を与えます。

メーテルリンクが、なぜ、青い鳥を逃がす結末をえらんだのか、ぼくには、わかりません。ただ、作者の意図したことだけが、作品のすべてではないと思うのです。読んだひとの数だけ、物語は生まれます。ですから、作品の解釈に正解はないんじゃないでしょうか。」

つまりレイジさんは解釈合戦をうながしているわけです。青い鳥の行方探す推理は、『青い鳥』の解釈をでっちあげる遊びに発展していきます。まったくこのシリーズは、子どもに悪い遊びばかり教えてけしからんですね。
第2話の「月曜日が来ない!?」は、タイトルからわかるようにループものです。ここで思い出されるのは、タイムリープが起きていた番外編の『七日目は夏への扉』です。「ふしぎ古書店」シリーズの読者は、この物語世界には神様もアヤカシも存在することを知っているので、そういう超常現象が起こること自体には疑問を感じません。しかし、誰がこの現象を起こしたのかということは謎のままになっていました。
この短編で、この物語世界のアヤカシはわりとカジュアルに時間操作をおこなえることが明らかになります。となると、でタイムリープを起こした容疑者が無数にいることになってしまうので、犯人を特定するのが難しくなってしまいます。困ったことになりました。