『アイドル・ことまり! 1 コイがつれてきた恋!?』（令丈ヒロ子）

アイドル・ことまり!(1) コイがつれてきた恋!? (講談社青い鳥文庫)

メインの舞台が東京に移り本格的に芸能活動が始まったということで、「温泉アイドル」がタイトルを「アイドル・ことまり!」に変更してリニューアル。愛瑠の通う東京の芸能スクールに見学に行くことになったことりと鞠香は、イケメン王子と美少女の群れに圧倒されます。なかには性格の悪い子もいて、デビルのような性格の美少女美莉にさっそく目をつけられ、ステージ上で転ばされるなどいぢわるを受けることになります。
しかし、こちらの陣営にはブラック鞠香がいます。愛瑠は根が善人なのでいぢわるをされてもなかなか悪意に気づきませんが、同類である鞠香はすぐにデビル美莉の本性を見抜きます。

「鞠香も中身がブラックだからね！」（中略）
「ことりの前ではめんどくさいから、本音で話すんだけど。わたしの本質が上品でかしこくて、マナーがいいから、百パーうそをついていることにはならないと思うの。」（p66）

とてもいい根性しているブラック鞠香とデビル美莉の褒め合っているようでけなしあっている高度な口喧嘩が、前半のみどころです。
そのほかにも、今回は鞠香の活躍が目立っていました。鞠香が今回もっとも輝いていたのが、東京の恋の神様に恋の願いを叶えてもらおうとすることりをだまくらかして願い事を変えさせようとする場面です。鞠香にとってことりは初めて本音でつきあうことのできた運命の相手ですから、東京のイケメン男子などに奪われるわけにはいきません。面白半分でイケメン男子がことりに気があるっぽいと煽ったのは鞠香ですが、ここで自分の首を絞めていたことに気づき、必死になります。そう考えると、自分の利益のためにことりの願い事を乗っ取ろうとして屁理屈をこねているようにみえる物言いも、ほほえましくみえてきます。
そして、鞠香がみごとに因果応報を食らうラスト。鞠香から目が離せなくなってきました。