- 作者: 小森香折,染谷みのる
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2017/08/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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前半のみどころは、絵合のトーナメントバトルです。絵合は作品を競うだけでなく、自分の作品のよさをアピールし相手の作品をけなすディベートバトルの側面も持っていて、心理戦やうんちく合戦など多様な楽しさを提供してくれます。事前に杏珠が汗臭いとほのめかして動揺させようとしたりする初音のいぢわる作戦も、傍からみていればおもしろいです。
杏珠と陸が交互に語り手を務める構成も効いていて、杏珠が真剣勝負をしているあいだに陸がこの絵合ははじめから仕組まれた出来レースなのではないかと疑いをを深めていく流れも盛り上がります。
後半は源氏物語にまつわる高桐家の宝探しをする展開になります。ここでも初音とその母が高度な京都人ギャグを繰り出してきて、笑わせてくれます。
「光る君」の光は日光ではなく月光であると、日の光の当たらない世界がしっとりと描かれています。陸の最後の述懐「視野はひろげたいけど、ちがう人間にはなれない」という言葉が印象に残ります。