『歴史探偵アン&リック3 源氏、絵あわせ、貝あわせ』(小森香折)

源氏、絵あわせ、貝あわせ (歴史探偵アン&リック)

源氏、絵あわせ、貝あわせ (歴史探偵アン&リック)

脳がお花畑のファッション少女杏珠と歴史オタク少女の陸が活躍する「歴史探偵アン&リック」の第3弾。今回の舞台は京都。京都で開催される源氏物語をモチーフにした小袿のデザインを競う絵合に杏珠が参加することになり、陸も同行します。ふたりを待ち構えていたのは、まわりくどいいやみを多用した京都人ギャグを駆使する性格の悪いお嬢様高桐初音でした。絵合をはじめとしてふたりはなにかと初音にからまれて苦労することになります。
前半のみどころは、絵合のトーナメントバトルです。絵合は作品を競うだけでなく、自分の作品のよさをアピールし相手の作品をけなすディベートバトルの側面も持っていて、心理戦やうんちく合戦など多様な楽しさを提供してくれます。事前に杏珠が汗臭いとほのめかして動揺させようとしたりする初音のいぢわる作戦も、傍からみていればおもしろいです。
杏珠と陸が交互に語り手を務める構成も効いていて、杏珠が真剣勝負をしているあいだに陸がこの絵合ははじめから仕組まれた出来レースなのではないかと疑いをを深めていく流れも盛り上がります。
後半は源氏物語にまつわる高桐家の宝探しをする展開になります。ここでも初音とその母が高度な京都人ギャグを繰り出してきて、笑わせてくれます。
「光る君」の光は日光ではなく月光であると、日の光の当たらない世界がしっとりと描かれています。陸の最後の述懐「視野はひろげたいけど、ちがう人間にはなれない」という言葉が印象に残ります。