『紫式部の娘。賢子はとまらない!』(篠綾子)

紫式部の娘。賢子はとまらない!

紫式部の娘。賢子はとまらない!

紫式部の娘賢子が宮中で暴れ回る『紫式部の娘。賢子がまいる!』の続編。彰子に仕える新しい女房藤袴が宮中にやってきます。しかし藤袴は定子の妹に生き写しだったため、不吉だと年かさの女房たちからいじめられます。藤袴を助けようとした賢子と、うっかり巻きこまれてしまった同年代の女房の小式部・小馬・良子は、藤袴と同様にいじめられることになります。
前巻から出ている人物はすでにキャラが確立されているので、その子らしい行動で楽しませてくれます。マイペースお姫様体質の小式部は、こんなくだらないことには構ってられないと、さっさと実家に帰ってしまいます。母親の権力を笠に着ていままで人をいじめるばかりだった良子は、初めていじめられる側にまわって動揺し賢子にやつあたりします。
新キャラの藤袴かぐや姫のような浮世離れしたお嬢様で、衣の裾をわざと踏まれても、相手は目が悪くてお気の毒だと心配するような有様。いままで宮中にはいなかったタイプの美少女に魅力を感じた賢子は、藤袴と友になりたいとアプローチします。藤袴は承諾するものの友というのがよくわかっていなくて、なにか特別な儀式をするのかと問います。そこで賢子はお互いの香り袋を交換して、友の証としました。
こんな感じで女たちは仲を深めていきます。しかし、政治の中枢にいる男からみれば、女など吹けば飛ぶような存在。皇太后の彰子といえど、権力闘争のための道具でしかありません。才気煥発で我の強い女たちも、巨悪が立ちふさがったときにはお互いにかばいあうことくらいしかできませんでした。女たちが連帯を深めれば深めるほど、そのはかない立場が無惨にみえてきます。
この作品は歌物語としても優れています。いいタイミングでこれしかないという名歌を繰り出してきて、エモーショナルなメロドラマをさらに加速させてくれます。賢子が思い人を必死で追うあの場面で紫式部のあの名歌を出されたら、そりゃ泣かされます。
賢子は彰子の間諜として、本格的に活動を始めました。母の紫式部も正体をあらわしてきました。紫式部と並び称されるあの大物もなにやら暗躍しているようです。男たちの横暴に抵抗する女たちの宮中陰謀劇として、物語は盛り上がってきました。こうなると、史実なんか無視して××をぶったおして××××を××させる展開も期待したくなってきますし、そのまま悲劇にしてもしっとりとしたよい作品になりそうです。ぜひ続きを出してもらいたいです。