『ミステリーバスの秘密』(新冬二)

ミステリーバスの秘密 (恐怖のとびら)

ミステリーバスの秘密 (恐怖のとびら)

1990年前後に国土社から刊行されたホラーレーベル〈恐怖のとびら〉の1作です。もらった覚えのない「ミステリーバスへご招待」というビラや、突然かかってきた電話でミステリーバスに誘われた少年キヨシが、参加するかしないか悩むという物語です。
この物語は、まだそれほど古びていない時代の〈ニュータウン〉が舞台になっています。そのため、近所に住んでいる人々の正体がまったくわからないという不気味さが、作品の肝になっています。ミステリーバスに関するやりとりは電話で行われ、同時に無言電話もかかってくる、お金の支払いも銀行振り込みという、まったく相手も顔が見えないまま事態が進行してしまうという気持ち悪さ。ミステリーバスの事件と前後してキヨシの周辺に灰色のトレーナーの少年や灰色のコートの男が出没するようになりますが、その正体不明さも恐怖感を煽っていきます。
また、銀行に参加費を振り込みに行った場面で、終業時間になったためシャッターが閉められ閉じ込められたような気分になるという、大人になると忘れてしまうような子どもならではの恐怖を描いているところもおもしろいです。
最後の最後までことの真相は判然とせず、なんともいえずいやな読後感を残してくれる作品です。