『となりの猫又ジュリ』(金治直美)

となりの猫又ジュリ

となりの猫又ジュリ

生まれてまだ四ヶ月しかたっていない幼犬チャルは、隣家に住んでいる猫又のジュリと出会います。ジュリは死んだ動物を空の国につながる門に導く活動をしていました。運悪くチャルには霊感があって動物や人間の霊を見ることができたので、厄介ごとに巻き込まれるようになります。
チャルは幼く、リードを木に引っかけて身動きがとれなくなっても何が起きたのが理解できないくらいぼんやりしています。そのため、ジュリには「チビのアホ犬」扱いされてしまいます。チャルが白骨化した犬の例に取り憑かれてガイコツ犬をおんぶしているように見えるところとか、ジュリがしっぽを旋回させて空を飛ぶところとか、絵ヅラとしておもしろい要素もたくさんあります。
しかし、そんな作中の空気だからこそ、幼犬には理解しにくい大人の世界や死の世界という裂け目が開いたとき、読者の背筋は凍りつきます。物語のテーマは死やペットと飼い主の愛情という重いものになっています。飼い主からネグレクトされて死んだ犬の亡霊が出てきたりします。ジュリの家は廃墟になっていて、ジュリと飼い主のあいだにもなにかがあったのであろうことが察せられます。チャルは飼い主からかわいがられていますが、最後のエピソードで思わぬ災難に遭い、愛情だけではダメなのだという問題提起もなされます。
小学校低学年くらいで読んだら、強い印象が残りそうです。