『ふたりはとっても本がすき!』(如月かずさ)

ふたりはとっても本がすき! (おはなしだいすき)

ふたりはとっても本がすき! (おはなしだいすき)

チーターのチッタちゃんとカバのヒッポくんは、どちらもたいへんな読書家でした。ただし読書のスタイルは異なり、チッタちゃんは速読して量をこなすタイプ、ヒッポくんは1冊の本を時間をかけてじっくり読むタイプ。ある日ヒッポくんと読んだ本の感想を話していたチッタちゃんは、ヒッポくんは本の内容をよく覚えていて具体的に感想が言えるのに自分はほとんど内容を覚えていなかったという現実を思い知らされ、逃げ出してしまいます。
わたしもチッタちゃんと同じく、読んですぐ忘れるタイプなので、身につまされるものがありました。チッタちゃんはヒッポくんのまねをしてゆっくり本を読もうとしますが、うまくいかず迷走します。
その後、夏休みの課題で読書感想文を書かされることになり、チッタちゃんもヒッポくんも感想文が苦手だったことがわかります。そして、お互いがお互いの読書スタイルを尊敬しあっていたことも明らかになり、ふたりが無二の読書ともだちになるであろうことをにおわせて物語は幕を閉じます。落としどころとしては妥当なところでしょう。読書のスタイルに優劣はなく、それぞれ好きなように楽しめばよいのです。
基本的に読書はひとりでするものですが。友だちがいれば別の楽しみ方もできます。チッタちゃんは自分が全然覚えていなかった本を読み直して、ヒッポくんの読みを追体験しようとします。好きな人の見ている風景を見ようとするのも、読書の楽しみ方のひとつです。読むことの楽しさを見直させてくれるのが、この作品の美点です。
ただし、ひとつだけ目を背けておいたほうがよさそうな件があります。世の中には、信じられないくらいたくさん本を読んでいて、なおかつ内容をきちんと覚えていて深く理解している人がいくらでもいるんですよね。自分が本の内容を覚えられないのは読むのが早いせいではなく、単に自分に記憶力・理解力がないせいなのではないか……ということは考えないようにしておきましょう。