『モノ・ジョーンズとからくり本屋 』(シルヴィア・ビショップ)

モノ・ジョーンズとからくり本屋 (ものがたりの庭)

モノ・ジョーンズとからくり本屋 (ものがたりの庭)

「まあ、たしかにびっくりだけど、あわてずそつなくやるしかないってことね」

当たり前のことですが、本を好きになるのに資格はいりません。字が読めなくても、本を好きになることはできます。
主人公のモノは、〈白鹿亭〉という本屋を経営するジョーンズ一家に引き取られた孤児です。彼女には、家族には絶対いえない秘密がありました。それは、文字が読めないことです。でも、本のにおいや重みやページをめくるときの音を楽しんでいました。家族は、モノは当然字を読めるものだと信じ込んでいました。現実的に考えるとこれは教育ネグレクトなんですが、お話ですからそこはおいておきましょう。
さて、そんなジョーンズ一家に思いがけない幸運が訪れます。〈モンゴメリー本の王国〉という超巨大書店のオーナーになれる抽選に当たったのです。経営難だった〈白鹿亭〉を後にして〈モンゴメリー本の王国〉を手に入れた一家。でも、そんなうまい話に裏がないはずがなく、思いがけない陰謀劇に巻き込まれることになります。
この作品の一番のみどころは、本の遊園地と化している巨大書店です。ジャンルごとに部屋がわかれていて、〈飛行機の本の部屋〉はコックピットのようになっていて本は計器板のように並べられている、〈森の物語の部屋〉では本は木の上に置かれていて本物の小鳥や小動物がいるといった具合に、各部屋の装飾に工夫が凝らされています。しかも、その部屋は観覧車のような巨大な輪にぶら下がっていて、それを回転させることで各部屋を呼び出すという、大がかりな機械仕掛けになっています。
主人公のモノは字が読めない分、観察力と推理力が発達していたので、探偵役として活躍します。魅力的な舞台で一風変わった探偵が悪と戦う冒険物語として楽しむことができます。