『しぶがき ほしがき あまいかき』(石川えりこ)

しぶがき ほしがき あまいかき (福音館創作童話シリーズ)

しぶがき ほしがき あまいかき (福音館創作童話シリーズ)

ほしがきをつくる話、と紹介してしまうとあまりにあっさりしすぎですが、その過程が魅力的に描かれていて読ませます。
竹をちょっと加工して柿をとる竿をつくったりとか、柿に紐を通す様子とか、なんでもないようなことが文章のリズムとイラストの魅力で楽しげに輝いてきます。また、柿泥棒を警戒する終盤の展開は一転して闇が効果的に使われる世界に変容し、こちらの緊迫感と弛緩も印象に残ります。
この本は横書きになっています。イラストでは木の枝や物干し竿や柿を吊しているハンガーなど横方向に伸びるものが印象的に配置されています。横方向の視線誘導はほしがきができるまでの時間の進行を感じさせる仕掛けにもなっています。