『歴史探偵アン&リック 鹿鳴館の恋文』(小森香折)

鹿鳴館の恋文 (歴史探偵アン&リック)

鹿鳴館の恋文 (歴史探偵アン&リック)

  • 作者:小森 香折
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2019/10/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

「明治って、かわいくない?」
「なんで?」
「ハイジに似てる。」

ファッションオタク少女杏珠と歴史オタク少女の陸のバディ探偵小説「歴史探偵アン&リック」の第4弾。今度はイギリスからの留学生ボビーが謎を持ち込んできます。ボビーはひいひいおじいさんの古い手帳に書かれた謎の文言とスズコという日本人女性の写真を発見し、その秘密を探っていました。杏珠と陸は、鹿鳴館時代のイギリス人と日本人の恋愛事件(?)の謎に挑むことになります。
いつもながら、ふたりのしっかりした分業体制が物語をスムーズに進行させていきます。ロマンチック方面は杏珠担当、政治やら外交やらは陸担当。陸の方は、学校の先生から外遊びのグループ活動を弾圧されるという問題も抱えていましたが、これが歴史事件とうまく噛み合って解決する流れも爽快です。
このシリーズの美点は、ジャンルの異なるオタク同士の友愛です。アクセサリーを愛する杏珠も古文書や武器を愛する陸もお互いの趣味を尊重しています。文化そのものの魅力、文化を仲立ちにして人は繋がれるのだということ。文化を通して世界の美しさを伝えることに成功しています。特に今回は、ふたりが小学校卒業を控えていることもあってペーソス成分も強くなっていて、ラストのふたり語り合う場面がしみじみとよかったです。
あとがきの書きぶりだとこれで最終回とも受け取れそうですが、別に中学生編を続けてもいいんですよ。いや、続けてください。