『ジャンピング・サクラ 天才テニス少女対決!』(本條強)

主人公の山崎桜子は、サッカーが大好きな小学5年生。ですが、世界レベルのテニス選手だった祖父からお寺を練習場所に英才教育を受けていたので、テニスの腕前はとびぬけていました。祖父の指示でたいした意欲もないのに出場した長崎県大会では余裕で優勝。テニスはサッカーと違って簡単に点が入るからつまらないと、真剣にテニスに取り組んでいる子たちから袋だたきにされても文句が言えないようなことを思っていました。慢心の極みにあった桜子ですが、東京から来たバックに花を咲かせる特殊能力持ちのお姫様のような天才テニス少女麗香*1に完敗し、百合に目覚めます。それも、「ああ、来た来た、この身が焼けるような劣等感。この感じ、もはや快感に変わりつつあります」とか言ってしまうくらい高度な領域にまで。
主人公がクズでお道化が過ぎるタイプなので、多少主人公が落ち込んでも軽く笑って読めるのがいいですね。
練習の場面は理論的で説得力があります。また、子どもがひとつの競技に縛られず、複数の競技を楽しむさまを自然に描いているのも、時代の進歩が感じられます。子ども向けのスポーツ小説としておさえるべきところを丁寧におさえている感じがします。
試合のシーンは、ギャグとシリアスの緩急の使いわけがうまく、ぐいぐい読ませてくれます。スポーツとは関係のないイメージ映像を差し挟んだりといったアニメ的な演出も効果的。ライトなスポーツギャグ小説としては、満点の作品です。

*1:年齢がばれるので、「お蝶夫人」とか言うのはやめよう。