2020-04-14 『月白青船山』(朽木祥) 児童書・国内 月白青船山(つきしろあおふねやま)作者:祥, 朽木発売日: 2019/05/11メディア: 単行本魔境鎌倉を舞台にしたファンタジー。兵吾と主税の兄弟は、夏休みに鎌倉の大叔父さんの家で過ごすことになります。代々兄は「兵吾」弟は「主税」と名付けられる風変わりな家系のふたりは、鎌倉で知り合った女子静音とともに不思議な谷に迷いこんだことをきっかけに、過去の謎、一族の謎に迫ることになります。 この作品の特徴は、物語は文脈のなかで成立するものだと意識させてくれるところにあります。岩波書店から刊行され、巻末に岩波書店の児童書の広告がついていなければ、この作品は成立しません。巻末にアリソン・アトリー『時の旅人』フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』C・S・ルイス『ナルニア国物語』といった作品群が並ぶことによってこの物語は麗しく閉じられます。この構造美はこの作品ならではで、得がたい読後感を残してくれます。