『チョコレート・ウォーズ』(エリス・ドラン)

チョコレート・ウォーズ

チョコレート・ウォーズ

児童文学マニアがこのタイトルをみて思い浮かべるのはこれなわけですが、中身はこれでした。本を開くとまず、「チョコエッグってどうやってつくってるとおもう?」という問いかけが提示され、読者の期待感があおられます。そして次のページで見開きを縦に使った大画面で、上から下へとその製造過程が解説されます。少し視線を移動させるだけで愉快なものがどんどん目に飛びこんでくるというのが絵本の醍醐味。そんな楽しさを存分に味わわせてくれます。
はじめに大鍋でチョコレートをつくり、それをニワトリたちが食べ……、え、ってことは、それが総排出腔から……? そんなチョコレート工場の秘密、知りたくなかった……。
さて、チョコエッグで儲けたバニーしゃちょうの欲望は増大し、ニワトリの労働者をこき使ってさらに利益を上げようとします。すると労働者は疲弊し事故も増え、労働環境は悪化します。ついにニワトリの労働者たちは立ち上がり、ストライキを決行します。
かなりエグいブラックユーモアでブラック労働の現場が描かれているのがみどころです。チョコレートをつくる巨大鍋に誤って落ちたニワトリは、そのまま行方不明になってしまいます。『セメント樽の中の手紙』かよって思いますが、このチョコレートはニワトリに食べられるからこのままでは共食いということになるわけで、さらにひどいです。イギリスのプロレタリア絵本、容赦がありません。
やがて労働者になるすべての子どもたちに読んでもらいたい作品です。
それにしても、チョコエッグの製造法は知りたくなかった……記憶を消したい……。