『秘密のノート』(ジョー・コットリル)

秘密のノート: JELLY (児童単行本)

秘密のノート: JELLY (児童単行本)

ジェリーは、モノマネが得意な女子。ギャグギャラとしてクラス内の地位を確立しています。そんな彼女ですが、人には言えない悩みをいくつも抱えていました。太っていて男子から「セイウチ」とからかわれること、美人の母親にクズみたいな男ばかりが寄ってくること、モラハラ体質の祖父のこと。ジェリーはそんな悩みを詩にして、秘密のノートにしたためていました。
自虐もまじえながらも、力強さを内包したジェリーの詩が魅力的です。その詩が母親の新しいボーイフレンドのレノンに見られ、才能を褒められそれを表に出すように励まされたことから、ジェリーの運命は変化しはじめます。
レノンは、いままでの母親のボーイフレンドにはいなかったタイプの超絶善人でした。ジェリーに将来ボーイフレンドができるだろうと母親が話すと「あるいは、女性」と付け加えたり、初潮を迎えたジェリーに適切な対応をしたり。ジェリーの周囲にはいなかった進歩的な男性です。
ただし、レノンのような正義の人は、現状に甘んじている人間にはストレスを与えます。正義の人は変革という選択肢の存在を示唆してしまうからです。しかし、一度勇気を出せばいまより楽な生き方をできるようになるかもしれません。そんな勇気をさわやかに描いた、前向きな話でした。