『ジークメーア 小箱の銀の狼』(斉藤洋)

斉藤洋の新シリーズ。海に面した崖の下にある洞窟に母親と隠れ住んでいる少年ジークメーアの旅立ちが描かれています。
斉藤洋ですから手慣れたもので、ファンタジーの開幕の期待感を存分に味わわせてくれます。洞窟に住んでいるというのがまず魅力的だし、主人公がフクロウよりも夜目の利く弓の名手だという設定も、これがどう生かされてどんな冒険が繰り広げられるのか、先の展開を待ち望む気持ちを煽ってくれます。予言者である母親に従い、ジークメーアは魔神と戦う運命に向かっていきます。斉藤洋はリライト作品も多く手がけていますが、『西遊記』と『西遊後記』のようにリライトとオリジナルの後日譚を描くことで古典を乗っ取って自分のものしてしまうという悪い癖を持っています。「ジークメーア」世界には「マーリンの書」なる予言書が伝わっていて、斉藤洋の聖杯伝説リライト『アーサー王の世界』との関連がほのめかされています。マーリンを愛の重いヤンデレとして描いた斉藤リライトがこっちのシリーズにどう関わってくるのか気になるところです。わたしはまだ『アーサー王の世界』は3巻までしか読んでないので、履修済みの方に語ってもらいたいです。