『森の王さま キング・クー』(アダム・ストーワー)

「ぶれいもの! わたしは、ひげもじゃの女の子だ!」
「女の子なら、キングじゃなくてクイーンじゃないの?」
「ばかを言うな! ひげもじゃのクイーンがどこにいる?」

学校のならず者たちに追いかけられていたベンは、ごみバケツの近くにあった穴に落ちてしまいます。その穴のなかを進んでいくと森にたどり着き、王冠をかぶってヤリを持ったひげもじゃの女の子 キング・クーと出会います。ベンはキング・クーと協力してならず者たちを撃退。しかし、ならず者のリーダーが市長の息子で、親の権力を利用してプロの仕事人を森に差し向けてきます。ベンとキング・クーはさらなる激闘を余儀なくされます。
ピッピ・ナガクツシタ系統の作品なので、まず楽しむべきなのはキング・クーのキャラ造形です。まず、「ドシン」という擬音とともに地上に降りてくる登場シーンがむちゃくちゃかっこいいです。強くて賢くて尊大なキング・クーは、バトルの相棒としてはとても頼りになります。ヤリにホタル入りのランプを装着していたり、「スカンクばくだん」なる強力な武器を持っていたり、装備品も豪華です。「花火にくくりつけられて、気球から発射された」といったホラっぽい身の上話を何種も語ってくれるお茶目さも魅力的です。
イラストもとてもよくて、悪党がきちんと悪党の顔をしているシンプルさが嬉しいです。序盤の市長の息子・市長・プロの仕事人の3悪党が一斉に顔見せするページが、本当にわっるい顔をしていて笑わせてくれます。彼らが市民の血税から「百億万ポンド*1」という大金を着服しようとする悪巧みのばかばかしさもいい感じです。
イラストの力は、森の場面で最も威力を発揮しています、巨大な木に滑り台やはしごやツリーハウスなどのギミックが並ぶ空間をベンとキング・クーが移動していくさまは、とても楽しそうです。そして追っ手がやってくると、森はさまざまなトラップが隠されたなにが起こるかわからないバトルフィールドに変貌するのです。
シンプルな勧善懲悪のストーリー・魅力的なキャラ・楽しいイラストの三拍子そろった、非の打ち所のない娯楽作品です

*1:おそらく英語にもこういう大金を表すばかっぽい言い方があるのでしょうが、原語でなんというのか気になるので、英語に詳しい方教えてください。