『りりかさんのぬいぐるみ診療所 空色のルリエル』(かんのゆうこ)

りりかさんは、ぬいぐるみを修復するお医者さん。高原の森のなかに診療所をかまえています。確かな技術と花の魔法を使ってぬいぐるみを治療するりりかさんのものとには、次々と患者さんがやってきます。
青いネモフィラ畑にたたずんでいると青空の上に浮かんでいるような気分になるといった、現実離れした異郷の美しさがまず目を引きます。
りりかさんは子どもやぬいぐるみ相手でも丁寧に手術の方法を説明します。適切なインフォームドコンセントができるりりかさんは、信頼できる医療者のようです。この描写はとりようによってはグロいものと受け止めることもできますけど。
くせものなのが、第3話。ここでは依頼者として、作者と同名の「柑野柚子(かんのゆうこ)という人物が登場します。作者が自身の思い入れに浸りすぎではという危うさはありますが、現在と過去、大人と幼年が溶けあうさまは魅惑的でした。