『とりあえずとりのはなし』(おくはらゆめ)

「おかあさんより、わたしの ほうが、ほんとうのことを しっている」

こんなんタイトルの時点で勝ってるじゃないか。「スズメのはなし」「メンフクロウのはなし」「ヤマシギのはなし」、鳥をテーマにしたお話が3編納められている童話集です。このなかから特におもしろかった「メンフクロウのはなし」を紹介します。

メンフクロウは、 ものすごく かるい つばさを
もっていて、 まったく おとを たてずに とぶことが
できる とりです。
ケムシも、カマキリも、ネズミも、メンフクロウが
ちかくに きても わからない。
ばさばさとも、 ぱたぱたとも、 なあんにも おとが
しない。
……
……
……
むおん。



きが ついたときには
メンフクロウの くちの なか。

これが冒頭の見開きのテキストです。1文目はプレーンな説明文で、そのあとは詩のようになっています。性質の異なる文を同じ画面に載せるテクニックで、「むおん」不気味な静けさを演出しています。
といっても、これは怖い話ではありません。メンフクロウは、人間の女の子が描いたペガサスとユニコーン合成獣「ペガコーン」の絵を見て、そっと四足獣に近づいて「ペガコーン」のようなシルエットをつくる遊びをします。子どもの空想遊びとが動物童話の世界にシームレスにつながっていきます。そして、心が「むおん」になるという境地に到達します。