『小梅の七つのお祝いに』(愛川美也)

第61回講談社児童文学新人賞佳作受賞作。
小学一年生の小梅は、忙しい家族にほったらかしにされがちで、七五三も後回しにされていました。11月の日曜日に小梅は、黒牛に導かれて神社から不思議な世界に迷いこみます。
児童文学読みがこの作品を読んでまず思い浮かべるのは、『はてしない物語』でしょう。『はてしない物語』型往還物語としてまずまずの作品です。
牛テーマのダジャレばかり言う黒牛はやさしげで、お祭りのような異空間も浮かれた雰囲気。そこそこの安心感を持って読み進めていくことができます。近づけは近づくほど巨大になる鳥居とか、ビルの壁のような巨大な赤い橋とか、単純に夢幻的なイメージも楽しいです。
しかし、死んだ七つの幼子は賽の河原に集まるもので、和風のこの手の異世界探訪は冥府巡りのような不穏さも抱えてきます。また、『はてしない物語』として読むならば、「元帝王」を思わせる闇設定も登場します。
現代の日本の児童文学としては珍しい空気感を持つ作品なので、著者が第2作でどのような作品を世に問うてくるのか気になるところです。