『生まれかわりのポオ』(森絵都)

背中に黒ぶち模様のハートマークを持つ猫ポオは、ルイにとって生まれたときからの親友でした。9歳の時にポオを喪ったルイがポオに再会したいと落ちこんでいると、小説家のママが『生まれかわりのポオ』というルイのためだけの物語をこしらえてくれました。
物語をつくる物語なので、作品世界は人工的な感じがします。作家によって強制的に転生を繰り返させられる猫といえば、佐野洋子の猫も思い出されるところです。でも、人の感情や信仰などはそもそも人工的なものですから、無機的なものから情動が生まれることこそ自然といえるのかもしれません。
ところで、猫の名前が「ポオ」というのは、かなり不吉なような気がします。そういえばカラスも出てくるし……。もしかしてこれ、きちんとしたアメリカ文学の教養を持たない人がうっかりしたことをいうと大恥をかいてしまうやつでは? あ、今回はこのあたりで口をつぐみます。

「また、きみに会えるだろうか?」
だが、ぼくの心に響いてくる彼の答えはいつもきまっていた。
「Nevermore!」
式貴士「窓鴉」より)