『イカにんじゅつ道場 ただいま弟子ぼしゅうちゅう』(香桃もこ/作 岡田よしたか/絵)

イカスミを利用したり、砂や海藻に同化して隠れたりするにんじゅつを極めたイカが、にんじゅつ道場を開きます。はじめに弟子入り志願してきたのは、魚のキス。なかなか砂に隠れる忍術を習得できないキスに、印の結び方を手取り足取り教えようとしたところ……。
弟子入り志願者たちは、天敵から隠れたり身を守ったりするために忍術を学ぼうとしていました。この習い事に趣味性は一切なく、そこにあるのはシビアな生存闘争だけです。それだけに、イカにんじゃの弟子に対する対応は、ひどい、ひどすぎる。一人称「せっしゃ」で「ござる」言葉を使う語りのユーモラスさも、ブラックな笑いを増幅してくれます。
キス・カニ・クラゲという3匹の弟子に対して同じパターンが繰り返され、4匹目の弟子がパターンを崩しオチになるというわかりやすい構成に安心感があります。イカにんじゃの表情をいやらしくおかしく描くとともに、厳しい生存競争が繰り広げられる水中世界の気味の悪さも効果的に描いたイラストも秀逸。ちょうどよく笑える絵童話でした。