『ふたごチャレンジ! 3  進め!うちらのホワイト革命』(七都にい)

シリーズ第3巻。なにかとふたごを助けてくれていた養護の先生・辻堂先生が学校に来なくなってしまいます。校長は全校集会でなぜか、嬉しそうなそぶりを見せながら辻堂先生が退職することを報告します。辻堂先生の身に起こったことを探り手助けをしたいと考えていたふたごに、意外な人物が協力を申し出てきます。
前巻で対立していたヤツと共闘という熱い展開になります。背表紙にもピックアップされているポーズのかっこよさも相まって、吉良くんの人気が爆上がりしそうです。吉良くんをはじめとした仲間たちと活動するうちにかえでの才能も開花。娯楽読み物としての質は安定しています。
それでいて、語られる事件はシビアです。吉良くんの話によると、ふたごたちをかばっていたことをネタに校長が辻堂先生にパワハラをはたらいていたとのこと。ここでふたごたちは、厳しい現実を突きつけられます。自分たちで戦っていたつもりだったのに、戦っていた自分たちをかばって傷ついていた大人がいたということに。
これは大人が解決すべき問題で、子どもに背負わせるのは筋違いではないかとも思えます。しかし、不正と戦う同志として子どもも大人と対等な立場に立たせたと考えると、社会派児童文学として正しい態度なのではないかとも思われます。
作品は、大人のクズさや弱さを容赦なく暴いていきます。校長のやっていることは教育理念の対立や管理職としての指導であるという域を軽く超えていて、ただのパワハラセクハラにしかなっていません。
校長にメンタルを壊された辻堂先生の描き方にも手加減がありません。学校に行きたくないから行かないだったらまだいいんですよ。辻堂先生は責任感が強いから、学校に行きたいのに行けないことに苦しんでいるというのが、つらいです。
ほかの先生たちは、生徒から説明を求められると逃げ出すなど、情けない醜態をさらします。偶然学校の外であった担任の佐野先生は、「今、ここにいる僕は、『緑田小の先生』じゃないから」と、ここでだけふたごたちを応援しているかのような態度をとります。つまり、組織に所属して労働している大人は自分の良心に従った行動ができないという現実を描いているわけです。
そんななかで子どもたちは、「チャレンジ」という言葉には「異議をとなえる」「ちがう意見を主張する」という意味もあることを発見します。レジスタンスや革命という言葉も使って、社会派児童文学として尖った姿勢をみせてくれます。