『かわいい子ランキング』(ブリジット・ヤング)

中学校で女子の「かわいい子ランキング」が出回り、上位に入った子もランク外の子も、すべての女子がそれぞれに傷つけられます。ややこしいのは、美人で人気者のソフィーが2位で、オタク階級の地味女子(ただし、男性に好かれやすいとされる身体的特徴を持っている)イヴが1位になったこと。ソフィーとつきあっていたらしいカースト最上位の男子ブロディがイヴに接近してきたりと、面倒ごとが起こります。
キラキラ階級の女子ソフィーが実はいい子であることは、すぐに明かされます。となると読者は、イヴやソフィーが連帯して男性性の悪に立ち向かうシスターフッドの物語になることを期待するでしょう。しかし、話はそうすんなりとはいきません。まず、女子間の断絶という問題が立ち塞がります。それも、キラキラ階級がオタク階級を踏みにじるというだけではなく、逆にオタク階級がキラキラ階級を侮っているという問題にも触れられます。
さらにやっかいなのは、女子が強者男子の魅力に簡単に惑わされてしまうことです。これも分断を生み、なかなか理想的な連帯は成立しません。
立ち向かわなければならない男性性の悪も、多層的に描かれています。弱者に屈辱を与える方法を知り尽くしていてそれをためらいなく実行する邪悪としかいいようのない男子もいれば、あまりにも幼稚な愚かさから悪をなす男子もいます。こんな複雑な悪との戦いは、絶望的なようにも思えてしまいます。
作品は物語としての決着をみせますが、読者に残された宿題は膨大です。