『 ヘビくんブランコくん』(おおぎやなぎちか/作 井上コトリ/絵)

冬眠から目覚めたヘビくんは、うっかりブランコくんのくさりに絡まってしまいます。嫌われ者のヘビくんがいるので、みんな人気者のブランコくんからも離れてしまいます。それでもブランコくんはヘビくんの友だちになってくれると言います。くさりから自由になることができたら友だちになって自分の話を聞かせるとヘビくんは約束しますが、ブランコをこいだはずみで遠くへ飛んでいってしまい、約束を果たせないままふたりは離ればなれになってしまいます。
ここからヘビくんの長い旅がはじまり、様々な出会いを別れを繰り返します。獲物であったはずのカエルと木に登って見た夕日の美しさなど、かけがえのない思い出をたくさん得ます。
旅のなかでヘビくんはいくつかほめられる経験をしますが、そのほどんとはヘビくんの勇気などに起因するものではなく、偶然の産物でした。体の長さだけが自慢だったヘビくんはこのことにより自分の弱さ卑小さを知り、それを受け入れていきます。
短い作品ですが、人生という長い旅を描ききった力作でした。