『2番めにすき』(吉野万理子/作 高橋和枝/絵)

ネコの学校は、生徒がネコなので授業に規律など求めようがなく、フリーダムです。授業はどこで聞いてもよく、イラストでは棚のなかに顔をつっこんでいる者、窓の外を眺めている者、柱に爪を立てている者などが描かれていて、おそらく先生の方を向いている者の方が少数派であるように思われます。主人公のナッチは平凡なぶちネコで、ミケ・マツゾウ・シオンと4匹でいつもネコタワーに陣取って授業を受けていました。ある日、オレンジ色の美しい長い毛を持つ女王さまみたいなプリシラが転校してきます。一目でプリシラのことが好きになったナッチは、自分の定位置のネコタワーのてっぺんをゆずり、ネコタワーの仲間は5匹になりました。昼休みにプリシラは、前の学校には「ベストフレンド」という制度があったと話します。ベストフレンドとはいちばんのなかよしの親友で、この学校でもベストフレンドをつくりたいのだと言います。ナッチは自分がプリシラのベストフレンドになりたいと期待しますが、プリシラが指名したのは毛なみがかっこいいミケでした。ナッチはプリシラから「二番めに すきなんだよ」と言われます。
このタイトルの残酷さよ……。好きな人から「(一番ではないけど)二番めにすき」と言い放たれることのキツさ。しかも、プリシラとミケはすぐに破局を迎えます。ミケは習い事で忙しくあまりプリシラをかまってくれないので、プリシラの思うベストフレンドとは異なっていました。しかしプリシラが次に指名したのはマツゾウで、やはりナッチは「二番めにすき」のままでした。
という絵童話の読者に提供するにはエグめの感情の物語でありつつ、実は作品の軸は異文化交流でもあります。転校生がベストフレンドという異文化を持ちこんできますが、ネコは本質的にフリーダムなので、いつも一緒に行動するようなベタベタした関係はあまり好みません。それゆえプリシラとネコタワーグループのベストフレンド関係は成立せず、プリシラとベストフレンドになりたいと願いながらも叶わないナッチも、自分が本当にほしいのはどちらかというと孤独であることに気づいていきます。作品は、ネコタワーや学校の秘密の地下空間など魅力的な道具立てでネコの自由を称揚します。
おそらく「ヒトの学校(の多数派)」では、ネコの価値観は是とされません。この作品の主要読者の年齢でも、そのことに苦しめられている子はいるはずです。現実では否定されがちなネコの価値観をぬけぬけとうたいあげながら、ネコと逆の価値観も尊重し、終盤の意外性のある展開に持ちこんでしまうのは、なかなかの豪腕です。

ネコは ひとりじめ
はっぱを ゆらして ながれる 風を
ネコは ひとりじめ
空に かがやく かぞえきれない 星を
(中略)
せかいの しゅじんこうは きみだから
どうどうと むねを はって 
ひとりぼっちを いきろ