『あたしとひぐっちゃんの探偵日記 みずき、さらわれる?』(櫻井とりお)

小学5年生女子みずきと、金髪長髪自称探偵のヤバげなおじさんひぐっちゃんの物語の第2弾。ひぐっちゃんが大型高級車でのドライブに誘ってくれます。もちろんただのドライブのはずがなく、さるおぼっちゃんをキャンプ先に送っていき、迎えまでの数日車を拝借して旅行するというろくでもない計画で、送っているあいだみずきは後部座席でビニールシートに隠されるという拷問を受けます。ところが、ひぐっちゃんを放置しておぼっちゃまが車を運転し(もちろん無免許運転で違法行為)、みずきとおぼっちゃまがふたりっきりになるという思いがけない事態になります。
2022年の佐原ひかり『ペーパー・リリイ』に2023年のこれと、なぜか氷室賞出身作家が夏に女子主人公のロードノベルの秀作を続けて出しました。楽しいロードノベルはいくらあっても困らないので、これは伝統になってほしいですね。予測不能なところに事態が転がっていくのがロードノベルの魅力なので、あまり詳しくあらすじは語らない方がいいでしょう。少しだけ付け加えておくと、それぞれ「愛情に恵まれてない」3人組が旅を通してお互いを知り自分を知っていく過程がみどころです。
櫻井とりおは物語の力を熟知していて信頼しています。この作中ではそれを「クッション」と表現し作中人物に与えています。このあたりに、櫻井とりおの児童文学作家としての資質があらわれています。