『鏡のうらのカガミさん』(みずのまい)

悩みを抱えた中学生たちが鏡のうらの世界に迷いこみ、ビューティーアドバイザーのカガミさんの施術を受けるという内容の短編集。学校に放火しようとか自殺しようとか考えるまでに追いこまれている子も登場しますが、それほど暗い展開にはなりません。カガミさんは容姿の変化と現実的な処世訓を与えてくれます。
ただし、いくつか尖ったエピソードもありました。第1話はいじめ加害者が主役になりますが、被害者に謝罪することも許されない加害であるということにまで踏みこんでいて、加害者に安易な逃げを容認していません。第2話は恋愛に関する欲望を全肯定し、同時に複数の人に恋愛感情を向けることもアリだとします。*1
また、美容に関わる話に普通に男子の主人公を登場させるところにも現代性が感じられました。

*1:たまたまその直後に読んだ金原ひとみの『腹を空かせた勇者ども』に「そういうさ、恋愛は(モラルや常識とは)別枠、みたいなのは古いと思う」という思想が出てるのをみて、それもそうかもと思ってしまいました。